きいろ

その部屋には少し前まで神さまが住んでいて

わたしは神さまの名前を知っていた

死後、部屋には誰もいなくなって、残された家具とタバコで変色した壁

それから神さまの生活の匂いがした

片付ける身寄りの誰もいない神さまの家は

暫くはそのままになっていたから

時々合鍵を使って内緒でこっそり忍び込んで

神さまの名前を呼んだりした

 

マンションの下から見える黄色いカーテンが

神さまの部屋の目印だ

遠くから見てもとても目立つ、

少し丈が短いがいい色をしていた

何年か前にわたしが取り付けたカーテンだ

 

神さまが死んで暫く経って

わたしはその部屋に入るのを躊躇するようになった

法律を破ってはならないと思って

遠くから黄色いカーテンを見るに留めた

 

何ヶ月も経った

今日ようやく

神さまの部屋が行政によって撤去されていた

もう家具も黄色いカーテンもなくなって

きっとがらんとした部屋

なんだか神さまが

再びようやく死んだような気もして

そうして結局いつもと同じように

遠くから見て祈った

 

神さまのマンションの前のトウモロコシ畑

今年はとても豊作のようで

穂が風に揺れている

何よりなことだと思った