わたしがわたしを殺した

わたしがだれかを軽蔑し、わたしがだれかを憎む。

わたしが嘆き哀しみ涙を流して死体に花束を手向けたり、

夜にはわたしがその花を踏みにじる。

それでもわたしが立ち上がって何かを変えようとおもったりする。

 

綺麗なことばをあつめたくない。

人の皮を一枚剥けば、そこにあるものは変わらない。

わたしが何人も人を殺し、わたしが何人も殺されている。

 

今日だれも殺さなかったのはだれにも殺されなかったのは、いわば何かの奇跡に近く、今日のわたしの穏やかな幸せは、どちらかといえば、低い確率を勝ち抜いて偶然に得たものだとおもう。

たった1秒ちがう世界では、何人ものわたしが人を殺した。死んだ。だれの問題でもなくわたしの問題だとおもう。