畜生
わたしの影の子があるいている
この人の家族は去年の11月に死んだ
毎朝はカフェオレとベーコンエッグと食パンを1枚という遺されたありふれを生きて
通勤路にあるつつじの花が嫌いなのにときどき立ち止まる厄介
8時31分の電車の一番後ろの車両にきっちり乗り込んで窓の外は同じ景色
そんな暮らしを続けているというひとりきりだ
いまや駆け出したくても右足をひきずる年齢
それでもあと半歩踏み出せば立派な迷子と名前を貰えるその日に
どうか間に合うようにと指折り数えて待っている
あらゆるわからないことは丁寧に新聞紙に包んで
名前をつけてから樹の下に埋めたのに
また生えたからややこしい
ますますわからなくなったわたしは
知らない鳥ばかりが飛んでいくのを見て泣いてしまう
それでも涙がでればまたのびてしまう命に
とことんの哀れはもう行き場がないではないか