泡(あぶく)

思い出の品もぜんぶすてないとならない
海に行ったときになにも買わないでよかった
もらった手紙はわたしには知らない宇宙のことばで書いてある
もう二度とよめることはないことばはそれでもまだ美しい形にみえた

たった一度乗り遅れただけでもう二度と会えない
何十光年彼方からここに来ていた

とおく波音うしろすがた裸足にかげ
引く波がおそろしい悲鳴をあげてさらってきえた
遠のく意識の中でもうだれの姿もなかった
暗闇はかわらないからとても安心をする