わすれ形見

あろうことか忘れてしまった

声も形も温度も

 

あたまの隅にはほんの少し

なんだか無様なことばかり置き去りにされていて

お湯がでなかった日のこと

起きたらひとりだったこと

おにぎりをうまく握れなかったこと

三つつなぎのプリンのこと

ときどき怒鳴りあったこと

 

陽炎がきらきらしている

ちょっとも違わずあの日の海の景色があって

涙が出るとよけいきらきらしてしまう