存在の墓標

息をする連続に

いつから慣れていたのだろう

夕焼けが

必ず朝焼けになるのは

ここが地獄だからか

 

火葬場で焼かれたら

人でなくなる

あらゆる差別や偏見から放たれるから

ようやくホッとする

 

おまえら誰一人のしらないところで

わたしの父は死にました

葬式はできる訳がなかった

能天気な顔をしているこの街に

せめてもの喪失を伝えたかった

 

なにもかもが他人事で憎い

日常は白黒のまま進んでいく

身体の隙間から止め処なく溢れてくる涙に

この街のすべてを

あらゆる世界の愛を沈めて

わたしも水底へ連れて行ってほしい

 

父はなにをしても赦してくれました

父はなにをしても笑ってくれました

誰ひとり憎まず、誰ひとり疑わず、ただ懸命に生きました

 

街には父の姿が焼きついている

春も夏も秋も冬ももうずっと独りだ

これから先あと何十年もわたしはずっと独りだ