似たような線

冷たい水は「まだ死んではいけない」というのに

あなたには「死ね」と言われているようだった

 

いつもの通り道では

大して知らないおじいさんがこっちを見ている

あの人には何が、わかっているのか

アスファルトの中できらきらとひかっている何かは

「還れ」と言っている

 

 

銀行のポスターの人の目が好きだったあの子の目に似ている

きれいなビー玉の目をしている

公園、青空、横断歩道、

ピイピイと啼いてうるさい

パンをふたつも買うことはとても卑しいからできなかった

 

ことばは魔法ではない

死に近づくことのほうが魔法だ

道路の端を歩く、ホームのギリギリを行く

あとたった半歩だ

 

部屋の隅の亀はわたしにしかみえない

この家では居ないことになって久しい

ときどきまだ在るのに、まだ在るのに

 

30分後にはどうせ全部忘れる

そうしてここまで生きてきた

断続的に続いてきた

正気に戻るのはあと何回あるのだろうか

 

手が震えている

足が震えている 

震えているのはほんとうにわたしなのか

 

最後のいま

景色がスローモーションになっていく

置き去りにされているのはなんなのか

そういえばだいたいのことは過ぎてからおもいだした

 

早くここから還らなければならない

やさしいひとがまだ待っている

拾っている景色をみながら

書き記すものがないから

身体に綴っている